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3学期始業式校長講話「温故創新」

 明けましておめでとうございます。きっと全員が心新たに新しい年を迎えてくれたことだと思っています。今年2019年は亥年です。もう少し詳しく十干十二支では、己亥(つちのと/い)となります。干支は、BC15~14世紀、今から約3500年前に古代中国の殷の時代に日付を表すために誕生し、十干、十二支は、ともに草木の生長に例える考え方です。

 己は、草木が十分に生い茂って整然としている状態で、成熟した組織が足元を固めて次の段階を目指す準備をする年になります。亥は、草木が枯れ落ちて種に生命を引き継いた状態で、春の芽吹きまで種の中にエネルギーを貯めているようなイメージになります。亥に木偏を補うと核となり、内側の芯を意味します。内部の充実を心掛けると良いそうです。

 つまり己、亥の意味から2019年は内なる充実をはかり、次のステージの準備をするという年になります。今の状況を維持し、いつも以上にインプットを意識しながら、2020年の新たな展開につなげることが大切になるようです。

 今日は、「温故創新」という言葉についてお話をします。伝統、文化、歴史など、古きを訪ねて新しきを知るという「温故知新」という言葉はよく知られています。2007年、当時の福田康夫内閣総理大臣が、中国訪問の際に孔子廟を訪れた時に、「文化の一つの原点。大変感銘深い」と語り、「温故創新」と揮毫したことで知られています。

 「温故創新」とは、古きを訪ねて新しきを創るとなります。「新」という字には、何年も苦労して育てた木をばっさりと切って別のものとして作り替えるという意味があるそうです。そこには過去を踏まえながらも、これからの新しい日中関係を期待する思いが込められていたようです。

 わからないことは、教えて貰ったり調べて理解することが大切です。しかし教えられたことばかりをずっとしていては進歩がありません。多くの経験をすることは大切です。しかし経験を重ねることが目的ではありません。もっと大切なことは、その経験をもとに自分で考えながら工夫することです。

 つまり経験を生かす力、うまく活用できる力が必要です。人は工夫することで進歩すると言われます。「温故創新」には、古きを踏まえて、多くの人々が共有しているものの見方や思考の枠組みであるparadigmを、新しく生み出せというmessageが込められているようです。

 Paradigm shiftとは、発想の転換という意味になります。私たちは心のどこかで他人の物差しや世間の基準など、今までの固定観念や既成概念に無意識、無自覚のうちにとらわれているのかも知れません。自分にとって本当の価値、新しい価値を見つけるためには、発想を変えて自分の物差しを持つことが必要です。そのためには、「温故創新」という言葉がkeywordの一つになるかもしれません。皆さんにとって、2019年がparadigm shift、「節目の年」になることを大いに期待しています。