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令和3年度 11月生徒朝礼 学校長訓話「暗闇ごはん」

 11月になり、秋から冬への季節の移ろいを感じています。国内のコロナ感染者数は比較的抑制されていますが、海外ではまた感染が豪華している状況になっています。引き続きコロナ禍への対応、変異株等による第6波の感染拡大に備えることが重要になります。皆さんの理解と協力を宜しくお願いします。

 今日は、先日、新聞で目にした「暗闇ごはん」という一風変わったワークショップを紹介します。東京都台東区にある浄土真宗 東本願寺派 緑泉寺の住職である青江覚峰さんが考案したものだそうです。

 覚峰さんは1977年生まれの14代目の住職だそうですが、米国カリフォルニア州立大学でMBAを取得したそうです。MBA(Master of Business Administration)とは、経営学修士という意味で経営学の大学院修士課程を修了すると授与され、欧米では大手企業のCEOの約4割がMBA取得者であり、経営者や経営をサポートするビジネスのプロとなるそうです。覚峰さんは住職としての務めだけでなく、異色の料理僧として料理や食育にも取り組んでいるそうです。

 「暗闇ごはん」のワークショップへの参加者は、明かりを落とした薄暗闇の部屋の中で、更にアイマスクをして食事をします。視覚を完全に遮断することで、残された嗅覚、味覚、聴覚、触覚をフル回転させ、見ていたときには気づけなかった様々な発見ができるそうです。

 そして食事の合間に色々な仕掛けがあるそうです。たとえば「野菜のテリーヌ」を食べた後に、主催者が「何の野菜が入っているでしょうか」とクイズを出します。参加者の一人が「ブロッコリーだ」と大きな声で答えると、他の参加者も同意することが多いそうです。しかし正解は「菜の花」だったそうです。

 普段いかに視覚情報に頼っているかということやまた不安な状態におかれると特に大きな声の人の意見に無意識、無自覚に流され易くなるかが実感できるそうです。

 また透き通った「トマトのスープ」を口にしたときに、多く人が見えていないときは、
自分の味覚で「これはトマトだ」と判断できるのに、アイマスクを取った瞬間に3人に1人は「透明だから違う」と答えを変えてしまうそうです。つまり「トマトは赤いはず」という思い込みが、判断力を鈍らせ、時には間違った判断につながることがわかります。

 覚峰さんは「私たち人間の持つ感覚は本来優れているのですが、『これはこの色』という先入観があると正解できなくなる」と話されています。

 「冷たい」「ちょっと酸っぱい」「さっぱりしていますね」などと、参加した同じグループの人達とうまくコミュニケーションを取りながら、自分の持つ先入観の存在や他者への寛容の度合いなどに自然と意識が向かうようになるプログラムになっているそうです。

 同時に「食材は、味付けは、味わいは」などと想像を巡らし、発見、感謝しながら食事に向かう貴重な経験となるようです。最後には「こんなに一生懸命食べたことがない。おいしい」という声も漏れるそうです。

 そしてこのワークショップでの気づきは、そのまま会社や組織で日々起こることにも通じると言われています。自分の思い込みに気づくためや自分の持つ感覚を研ぎ澄ませるためには、想像力を刺激することが大切なようです。

 まさに「目を閉じてこそ見えるものがある」と思われます。皆さん一人ひとりが、身近なことから実感して貰えることを期待しています。

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