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令和3年度 1学期始業式:「程よい距離」

 昨年度はコロナ禍への対応のため、日々の学習活動やクラブ活動、様々な学校行事等、全ての学校生活において、皆さんには大きなストレスを強いる結果になり本当に申し訳なく思っています。

様々な変更や中止、色々な工夫を重ねながら、皆さんの学びを止めないこと、生活リズムを整えることを目標に取り組み、皆さんの理解と協力で、昨年度を終了することができました。改めて皆さんの理解と協力に感謝します。

 しかし残念ながら今年度も昨年度と同様に、コロナ禍への対応を求められる状況からのスタートとなりました。昨年度の経験を踏まえながら、Postコロナ、一つの節目として捉えた今後の対応が必要だと感じています。

日々の学校生活、学校行事にも、様々な対応や更なる工夫が求められることになりますが、これはまさに予想外、想定外の事象へ対応する力のトレーニングであり、様々な状況に応じて、時には正解ではなく最適解や納得解で対応できることが重要になります。 

そしてこの力こそが、これからの社会を生きるために私たち人間に求められる力となります。皆さんもこの状況をむしろチャンスとして捉え、それぞれが「自立した学びができる学習者になる」という自覚を強く持ってくれることを期待しています。

 始業式に際して、今日は「ヤマアラシのジレンマ」という言葉についての寓話を紹介します。寓話とは教訓や風刺を織り込んだ物語となります。ヤマアラシは体に針のような毛を持っています。寒い冬のある日、寒さに震えていたヤマアラシたちは、お互いに温め合おうと体を近づけました。

 ところが近づきすぎるとお互いのとげが相手を刺すので痛くて近づけません。そこでいったん離れるのですが、離れると寒くてたまらないのでまた近づきます。するとまたお互いのとげが刺さって傷つく。それを繰り返しているうちに、ヤマアラシたちはお互いに程よい距離を見つけていきましたという寓話になります。

 「ヤマアラシのジレンマ」とは、ドイツの哲学者アルトゥル・ショーペンハウアーが、人間関係を象徴的に表した寓話から生まれた言葉だそうです。その後「他者との適度な心理的距離を探ろうとする心理的な葛藤を表現する言葉」として、オーストリアの精神科医ジークムント・フロイトが、精神分析の領域に導き入れた言葉であると言われています。

 寒さに震えるヤマアラシは、互いに寄り添おうとしても針のような体毛で相手を傷つけてしまうため近づくことができません。そのような状況をたとえた心理学の言葉です。
 つまりヤマアラシたちは何度も「くっついては離れる」を繰り返し、やがてお互いを傷つけない距離を見つけて、そしてそこに落ち着くということになります。

 春は新しい出会いの季節です。色々な人との出会い、様々な新しい経験や体験が楽しみな季節です。仲良くなるためには距離を縮める必要がありますが、人との距離を見誤り、不用意に相手の領域に踏み込みすぎて心を傷つけてしまうこともあります。

 多くの人は、近づいたり離れたりしながら、人との程よい距離を学んでいきます。親しいからといって、むやみにプライベートに踏み込んでは失礼になります。クラス・学校には、色々な性格や個性を持った人たちが集まっています。大切なことは、一人ひとりの個性や違いを認め合い、協力することの楽しさを感じることです。

 私たちは皆違うからこそ素晴らしく、お互いに学び会うことができます。程よい距離を保ちながら心を温め合う関係を築くことが大切です。そして私たちはチーム近大附属の仲間として、今、自分ができること、するべきこと、やり遂げなければならないことをしっかりと判断し、そして確実に実行することが大切になります。

 皆さんの取り組みが、それぞれの目標の実現へ繋がるスタートになることを大いに期待して、令和3年度の始業式に際しての言葉とします。

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