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平成30年度 三学期終業式 校長訓話
本年度も今日で終了となりました。先日の卒業式で紹介した松下幸之助氏の言葉のように昨年度の自分と比べて成長した自分を実感してくれていることを期待しています。
今日は、先日目にした雑誌で取り上げられていたアメリカの大学でのある実験報告について紹介します。「学生時代の成績なんて当てにならない。学生時代に成績の良かった者が社会に出て必ず成功するとは限らない」というような話は、昔からよく耳にすることがあります。
ある教授が、卒業して10年20年後に在学中優秀だった学生が社会でそれほど活躍せずに、意外と思われる卒業生が活躍しているということに興味を持ったそうです。そこで一つの実験をしたそうです。それはクラスの学生達に「今ここに1万ドルの資金がある。これを殖やして還元して貰うために誰にならそのお金を託せるか」、但し自分以外でという条件で投票をさせたそうです。
学生達は、あまり成績が悪い人ではリスクが高いだろう。要領が良くうまく点数を取るだけの人も何となく、真面目だけれども人に指示されないと行動できない人では、冗談がうまく楽しい人柄で人気はあるけれど...などと色々な要素をそれぞれが考えて投票したそうです。するとその投票で選ばれた学生は、卒業後ほぼ間違いなく社会的に成功をおさめるという状況が続いたそうです。
このことは同級生や仲間、言い換えれば同じ位置に並んでいる人達の目は、ペーパーテストの点数や結果の評価だけでは捉えきれない、つまりその人の人柄や日頃の行動や発言、器量の大きさなどをしっかりと見抜いているということになります。
当然のことかもしれませんが、誠実で決断力があって信頼できる学生がたくさんの票を獲得するそうです。社会に出てからも活躍できる人になるためには、同級生や仲間から上っ面だけでない信頼を得られるような人になることが何よりの秘訣になるようです。
認知能力とは、学力の成績のようにテストなどで点数として分かりやすく評価できる能力のことです。読み書き算盤などの基礎学力や知能指数、偏差値等です。一方非認知能力とは、興味・関心はもとより、粘り強さ、計画性、挑戦する気持ち、Communication能力や感情をコントロールする能力等、テストで測ることのできない能力です。
幼児教育では、認知能力とは園児が跳び箱を跳べるようになったあるいは何段飛べたかとわかる能力であり、非認知能力とは、跳び箱を跳ぶために色々と工夫したり粘り強く何回も挑戦することで伸びる能力だといわれます。
認知能力と非認知能力とは絡み合うように伸びることが最近の研究で確認され、このサイクルを意識することで両方を効果的に伸ばすことができると考えられています。 これから私たちが生きる社会においては、様々な変化に対応する為に学び続けることが必要になります。非認知能力は生涯の学びを支える力として今注目されてます。もちろん年齢に応じて飛び箱となる対象が変わります。
少し立ち止まって自分自身の日常の生活の中で、あてはまることをじっくりと思い浮かべてみて下さい。きっと身近な所に何か見えてくるものがあるはずです。今の自分にとっての跳び箱とは何か。例えば損か得か、好きか嫌いかだけが判断基準の狭い価値観ではなく、その飛び箱に向けて色々な工夫や体験、挑戦しようとする意欲やプロセスを大切にする姿勢などが重要になるようです。
今年度の終わりに際して皆さん一人ひとりが、来年度の学校生活、あるいはそれぞれの目標に向けての高校生活の過ごし方にうまく繋げてくれることを期待しています。