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令和3年度 入学式式辞

 満開の桜に緑の若葉が顔を出し始め、葉桜へと移ろうこの良き日に、令和3年度近畿大学附属高等学校・中学校の入学式を挙行できますことを心より御礼申し上げます。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から皆さんは、近畿大学附属高等学校・中学校の生徒です。

 本年度、高等学校へは男子546名、女子345名、併せて891名、中学校へは男子157名、女子130名、併せて287名、新入生の総数は1178名となります。きっと全員が自分の目標に向けて、日々努力を重ね、時には厳しい現実とも向き合いながら様々な困難を乗り越えて、今日の日を迎え、喜びもひとしおだと思います。どうぞ今日の自分にしっかりと自信を持って下さい 

ここから見ていると、皆さん一人ひとりの顔が、とても素晴らしく輝いています。この凜とした空気の中に、これから始まる新しい学校生活への皆さんの大きな期待が感じられます。そしてそんな皆さんを本校に迎えることができ、本当に嬉しく思っています。

 今日は皆さんに、社会環境の変化を見据え、様々な固定観念を打ち破りながら生まれた、新しい「あたりまえ」についてのお話をします。これからの皆さんの学校生活をより充実させる参考になればと思っています。

 セブン-イレブンの生みの親であり、セブン&アイ・ホールディングスの元会長である鈴木敏文さんが、コンビニを1973年に日本で導入しようとした時に、周囲はほとんど反対だったそうです。当時、日本では大型スーパーマーケットの全盛期で、商店街の小型店は凋落の一途をたどっていました。社内からもコンビニなんかつくっても「無理だ」「やめろ」の大合唱だったそうです。

 それでも鈴木さんは、翌年の1974年に本格的なフランチャイズのコンビニエンスストアとして日本初となる東京都「セブン-イレブン豊洲店」をオープンしました。その店舗は現在も営業しているそうです。コンビニのおにぎり、お弁当、おでん、ATMの設置も、みんな反対の大合唱の中から、生まれたそうです。おにぎりやお弁当は、「家庭でつくるものをわざわざ買いに来ない」と言われたそうです。

しかし誰もが無理と思っていたことを始め、大ヒットを続けると「どうしてあなたは、他の人が見えないものが見えるのか」と質問されたそうです。

鈴木さんは、「私としてはその都度、そんなに難しいことを考えて、発案したり考察したわけではありません。新しいものを生み出すといっても、それは何かを創造するというより、世の中にすでにある多くのもののなかから何かを見出し、結びつけようという発想をしてきました」と答えたそうです。

おにぎりやお弁当の販売は、日本人も外食の機会が増えてきた中で、「アメリカのホットドッグに相当するような日本型ファストフードがあったらいいな」と考えたのが始まりだそうです。

また「おでんは1970~80年代の頃はまだ、夕方になると街角に屋台が繰り出してきて、明け方までお客が腰かけている光景をよく見かけました。それを見て『おでんは日本人の生活から切り離すことができない、食べものではないか』と考え、コンビニエンスストアと結びつけたことで、コンビニおでんという新しいカテゴリーが生まれました」と。

そしてセブン銀行の設立も、「24時間365日、いつでも下駄履きで近くのコンビニで小口現金を出したり入れたりできたら便利だ」と思っただけで、特に難しいことを考えたわけではないと話されています。

 鈴木さんは、「必ず世の中は変化するということを頭に入れておけば、世の中に起きていることでひっかかるものが見つかる。そこを解決しようと考えるところに新しいビジネスの一歩がある」とも話され、問題意識をもって世の中の動き、変化の本質を見ることの重要さを指摘されています。

 人間は、過去の延長線上で考えてしまいがちです。それは、これまでの延長線上で考えたほうが楽だからです。昨日と同じことを今日もやり、明日もやる。もちろん毎日の積み重ねは、とても大切です。しかし楽な方に流れたときから周囲の変化に気づかずに、取り残されていくことにもなりかねません。少し先の未来を見つめることで様々な変化への対応力が鍛えられるはずです。

 それは「できない理由」をあげる前に、もう一度、今「できない理由」として考えていることは、本当に「できない理由」となるのかと「考える」ことこそが、そのスタートとなるはずです。

 本学の学園章は、梅の花を象徴しています。そして、その花びらの一部が離れているのは、内面の未完を表し、現状に止まることなく、更なる完成、より高い目標を表す、未来志向の姿勢が込められています。

 これからの予測不能の社会を生き抜く為に、今、私たちはどんな力を求められているのかを理解し、そして、その力をしっかりと身につける意識を持つことが重要になります。どうすればもっと良くなるかということを自分なりに考え、工夫することが、自分自身を成長させる大きな力となります。

ぶれない軸を持ち、やってみた上で検証することが大切です。成功の反対は、失敗ではなく何もしないことです。失敗からは多くのことを学ぶことができます。失敗を恐れることなく、色々なことに挑戦して貰えることを期待しています。

 今日から、皆さんの本校での新しい生活が始まります。これから3年間あるいは6年間をかけて、この学園で学ぶ目的は、自分の持つ力を自分で掘り出す力、学び方を身につけることです。そのためには、学校生活における様々なことに興味・関心を持ち、主体的に考える習慣を身につけ、自立した学びができる学習者になることです。

 学校は、自分の夢を実現するためのトレーニングの場です。「人に 愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう」という校訓は、それを覚えることが目標ではなく、自分ならばどのような人を愛し、信頼し、尊敬するかを考え、その実現に向けて自分自身が実践することが目標です。

 近畿大学附属高等学校・中学校には、皆さんが存分にトレーニングできる環境があります。それをうまく活用できるかどうかは自分次第です。自分はどうなりたいのかという思いこそが、自分の夢への第一歩です。

本校ではたくさんの先生が、皆さん一人ひとりにしっかりと向き合い、様々な学びの場を提供します。皆さんがたくさんのものを手に入れ、そして自分で考えること、仲間と協力することを楽しんでくれることを大いに期待しています。

 新入生の保護者の皆様、改めましてお子様のご入学、誠におめでとうございます。今日の良き日を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。本日より3年間あるいは6年間、私ども教職員一同のみならず、近畿大学学園が責任を持って大切なお子様をお預かりいたします。

生徒達は学校生活の中で色々な課題と出会いながら、自立し、これからの社会をより良く生きるための力を育んでまいります。 様々な経験・体験を重ねながら、心身ともに大きくたくましく成長します。時にはトラブルを通して社会生活の根幹を学んでいくことになります。

 生徒達のより良い成長には、保護者の皆様と教職員が、心を一つにチーム近大附属として生徒達を見守り、育んでいくことが大切です。附属高等学校・中学校では、生徒全員が自分の夢を大きく育て、

将来、立派に実現できる力を身につけるように、精一杯、力を尽くしますので、どうぞご安心してお任せ下さい。本校へのご理解ご協力を重ねてお願い申し上げまして入学の式辞とさせて頂きます。

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