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平成30年度 4月朝礼 校長訓話 「陽口(ひなたぐち)」

 今日は、「陽口」(ひなたぐち)という言葉についてお話しします。あまり聞いたことのない言葉ですが、インターネットなどを通じて広がっている造語だそうです。人のことを悪く言う「陰口」の対義語として、本人のいない場所で、その人の良い面についての話題があがることやその誉める言葉を指すそうです。

 残念なことですが、人は本人のいないところでは陽口より陰口を言う機会の方が圧倒的に多い傾向があります。人の良くない面ばかり捉えても何も得ることはありません。

 「日本ほめる達人協会」、通称「ほめ達」と呼ばれる一般社団法人があります。その取り組みが、以前、NHKのクローズアップ現代で全国放送されていました。現在、日本国内だけでも年間約4000人以上の交通事故死がありますが、残念ながらその6倍にもなる年間約2.5000人が自ら命を絶つという状況があります。

 この異常な事態を「日本ほめる達人協会」は、今、日本は物理的な戦争はしていないものの、これはまさに「心の内戦」と位置付け、ほめる達人を多く輩出することを目的とし、自殺を防止して笑顔のあふれる社会を目指して設立されたそうです。

 理事長の西村貴好さんは、「ただお世辞やおべんちゃらを言うのではなく、心の底から相手の良さを見い出し、あらゆるものから価値を発見できるのが『ほめ達』であり、人を誉めることで、その誉められた人に光が当たるのと同時に自分も輝く」と話します。

その理由は「人は誰かを誉めるとき、自然と笑顔になるから」と説明します。「陽口」、つまり誉めるためには相手のことを深く知ることが必要です。するとコミュニケーションの機会が増え、今まで気づかなかった新しい発見に出会うことになります。

 スタンフォード大学の心理学者であり、大学で人気の健康心理学の講義を担当するケリー・マクゴニガルさんは、他人の幸せを喜ぶことは、周囲にも自分にも大きなメリットをもたらすと言います。それは人との繋がりを強くするだけでなく、自分自身の中にある嫉妬や怒りなどのマイナスの感情を取り除く効果があるそうです。まさに心のデトックスとなるようです。

 マクゴニガルさんの著書である「スタンフォードの自分を変える教室」は、日本では70万部を超すベストセラーになりました。TED Presentation「ストレスと友達になる方法」は1200万回の再生回数を記録し、TEDでこれまで最も人気の「トーク20」にランクインしています。今までのストレスに対するイメージが大きく変わるかもしれません。是非一度聴いてみてください。

 マクゴニガルさんは、こんな例を紹介しています。あるmeetingで参加者が順番に自己紹介をしている時に、A さんが自分の一つ前に発言したBさんについて「彼女はこんな実績のある素晴らしい人物です」と誉めました。するとその場が明るくなり、皆が一つ前の人を誉めるようになり、すると喜びの連鎖が起こり、その場にいた全員が幸せな気持ちになったそうです。そのエピソードは、自分が幸せになるためには、まず周りの人に喜んでもらうことが大切だということを教えてくれています。

 ライバルや苦手な人のことも誉めてみることで、今まで気付かなかった新しい発見があるかも知れません。誰かの幸せを心から祝福できるようになるために、小さな褒め言葉をかけること、「陽口」を実践してくれることを期待しています。

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