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3学期始業式 学校長講話「幸福を見る」

 新年明けましておめでとうございます。きっと全員が心新たに年の始めを迎えてくれたことだと思っています。

新年早々オミクロン株による第6波の感染拡大の入り口であるとの報道も出ています。オミクロン株は、感染力は強いが重症化は少ないとも言われていますが、まだまだ不明な点が多く情報が錯綜しています。

大切なことは、自分たちで感染拡大を防ぐ意識です。マスクの着用、手指消毒、適正なソーシャル・ディスタンス、会話の声のマナー等、今までの感染予防の徹底が重要だと思っています。皆さん一人ひとりの理解と協力を重ねてお願いします。

 今年2022年は寅年です。もう少し詳しく十干十二支では、壬寅(みずのえ/とら)となります。壬は水のエネルギーを表し、悠々と流れる大河や止まることのない海流ように大きく動く水であり、絶えず流動するイメージがあるそうです。

 寅は木の陽のエネルギーを表し、行動、決断という意味を待ち、春が来て草木が生ずるイメージがあるそうです。そして壬寅には、冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、大きく花開くためには地道な努力を行うことが、必要であるとも言われているそうです。

 様々な社会問題が発生する中で、古い制度や枠組みを改変し、安定した繁栄や成長の礎を築くべき年になるそうです。コロナ禍をしっかりと乗り越えて新しい時代を創り、自分たちの更なる成長を見据えて協力、協働できる年になることを期待しています。

 今日は、「アンパンマン」の作者として知られている絵本作家であり、詩人であるやなせたかし氏の言葉を紹介します。

 やなせ氏は「アンパンマン」について、アンパンマンは世界最弱のヒーローであり、そして本当の正義の味方は、戦うより先に飢える子供にパンを分け与えて助ける人であると述べています。そこには大正8年生まれのやなせ氏の下士官として従軍した戦争体験がベースにあり、「自分はまったく傷つかないままで、正義を行うことは難しい」という思いがあるそうです。

 そんなやなせ氏の言葉に、「幸福は、幸福な人には見えません。もしも不幸になったら、そのとき、幸福が見えるはず」とあります。

 それは明るい日差しの中で過ごしているときは、そのありがたさに気づかないことがあり、闇の中で初めてその暖かさや美しさを実感するということかも知れません。目の前にある今の幸福があたりまえになりすぎて見えなくなっていると、逆に悪い点ばかりが、見えてしまうのかも知れません。

 朝起きる、食事をする、歩く、仕事をするなど、日常生活の全てを振り返ったとき、そのあたりまえに感謝できる視点を持てるかどうかになるようです。

 「くれない族」という言葉があるそうです。子供の頃に「どうしておもちゃを買ってくれないの」「どうして遊びに連れて行ってくれないの」と駄々をこねた経験は誰にでもあるはずです。誰でも幼い頃は、程度の差こそあれ与えてもらうことを当然のように思っているものです。

しかし大人になっても、同じように考えてしまう人が多くなっているそうです。

こんなことになったのは、あの人が何もしてくれないからだ。みんなが自分を評価してくれないからうまくいかないんだ。自分から与えることをせずに、人に何かをしてもらうことばかり求める人を「くれない族」と言うそうです。

 もしうまくいかないことがあれば、人が「してくれない」のではなく自分自身が「していない」のだと気づき、改めて自分は多くの人に支えられていると受け止められることが重要となります。

 考えてみれば、健康や財産、家族や友人、能力や技術等、自分の身の周りにあるものは、どれをとってもあたりまえにあるものはありません。一度でも事故や病気、あるいは入院などを経験した人は、ごくありふれた日常を送るのがどのぐらい大変なことなのかを知っているようです。幸福とは、貰うことではなく与えることかも知れません。与えることで心が豊かになり、人に感謝する大切さも感じることになるようです。

 最後に明治時代の作家である幸田露伴が提唱した3つの教えである「幸福三説」を紹介します。

「惜福」。自らに与えられた幸福を取り尽くしてしまわないこと。たとえば財産を浪費しないことや自然からの恵みを取り尽くさず長く収穫できるように工夫する考え方。

「分福」。幸福を人に分け与えること。周囲を幸せにすることが自らの幸せに繋がるという考え方。日本に昔からある「お裾分け」や「恩送り」などです。

「植福」。幸福の種をまくこと。自分だけではなく次世代の幸福を願って行うこと。環境問題の解決や新エネルギーの開発等です。

 露伴は、自分のことだけを考えていたのでは、長く続く幸福を得ることはできない。与えられた幸せを大切に努力し続けること、互いを思いやる心が大切だと述べています。

「幸福三説」は、今からおよそ100年前に提唱されました。まさに昔の人の経験の蓄積によって生まれた「先人の知恵」になります。

 これからの世界を生きていく私たちには、新しい生活への工夫や知恵が求められます。そして一番大切なことは、自分たちの手で幸福を創るという意識です。一人ひとりが色々な分野で活躍してくれること、皆さん全員がそれぞれの2022年の目標を達成してくれることを大いに期待しています。