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2学期終業式 学校長講話「レジリエンス(resilience)」

 現在、国内のコロナ感染状況は減少した状況で推移していますが、年末年始にかけて従来の変異株よりも感染力が強いとされるオミクロン株による第6波の感染拡大が懸念されています。

今学期もコロナ禍の影響によりストレスの多い学校生活となり、学校行事も変更、中止を余儀なくされ、申し訳なく思っています。皆さんには引き続き感染対策への理解と協力をお願いし、3学期に予定されているスキー学舎、修了式等を実施できることを期待しています。

今日は、レジリエンスについてお話しします。レジリエンスとは、外的な衝撃にも折れることなく立ち直ることができる「しなやかな強さ」のことです。元は「反発性」「弾力性」を示す物理学の用語であり、ここから「外からの力が加わってもまた元の姿に戻れる力」という意味で使われるようになりました。

 心理学や経済学では「復元力」という意味でも使われます。現在は世界が益々不安定になり、かつ不確実性が高まり「レジリエンスが求められる時代」とも言われています。心理学分野でのレジリエンスの研究は、40年ほど前から始まりました。第2次世界大戦下のホロコーストで孤児になった子供たちを追認する過程で注目されたそうです。

 ホロコーストとは、ナチス政権とその協力者によるユダヤ人への迫害および殺戮を意味し、「焼かれたいけにえ」という意味のギリシャ語を語源とする言葉だそうです。孤児たちの追認調査では、過去のトラウマから抜け出すことができずにいる元孤児とトラウマを克服して充実した人生を送っている元孤児の双方が存在すると判明しています。

 その違いはストレスなどの外的圧力を跳ね返す「復活力」、逆境や困難に押しつぶされることなく外的環境に順応していく「適応力」にあることがわかったそうです。日本でも10年ほど前から研究が始まりました。

レジリエンスの定義は色々ありますが、共通するところは、「ストレスのある状況や逆境でもうまく適応し、精神的健康を維持して回復へと導くもの」となるようです。レジリエンスが高まると集中力や活力が高められて、限られた条件を最大限に活用でき、他人や周囲の状況に対して、効果的に働きかけて問題解決ができるようです。

 そして、心の回復力であるレジリエンスが高い人には、次の5つの特徴があると考えられています。

1.思考に柔軟性がある
2.感情をコントロールできる
3.自尊感情が養われている
4.挑戦を諦めない
5.楽観的である

米国精神医学界では、レジリエンスは先天的な能力ではなく後天的に身につけて伸ばしていくことができる能力だとして、レジリエンスを身につける方法を提唱しています。

レジリエンス教育先進国の一つであるオーストラリアなどでは、レジリエンスを身につける学習プログラムを中学や高校の教育課程に取り込んでいるそうです。

8歳までの子どものレジリエンス向上に取り組むカナダでは、レジリエンスに関連する7つの重要な能力として、「自分の感情を自分で管理する力」「自分の衝動をコントロールする力」「問題の原因を分析する力」「他の人への共感力」「自分の力を信じる力」「現実的な楽観主義を維持する力」「他の人やチャンスに手を差し出す力」を挙げ、それらを高めるトレーニングを行っているそうです。

 そしてレジリエンスは単なる技術やスキルではなく、本人のマインドに大きく関わると理解されています。それは「何かうまくいかないことが起こったときに、それをどのようにとらえるか」ということが基本であり、その中核に位置するものが「自己肯定感・自尊感情」と考えられています。

 現在のコロナ禍に象徴されるように、これからのますます不確実で不安定な世界やストレスを避けることが困難である社会を生き抜くために、皆さんが「レジリエンス」の考え方を理解し、しっかりと身に付けて欲しいと思っています。

皆さん一人ひとりが新しい年の目標をしっかりと決めて、その実現に向けて全力で取り組んでくれることを大いに楽しみにしています。