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5月朝礼 学校長講話「芋こじ」

 おはようございます。先日連絡しましたように、本校では、生徒の皆さんやご家族、教職員の安全を第一に考え、臨時休業を延長して遠隔授業での学びを継続する判断をしました。これからもそれぞれの学びを止めることなく、共に頑張りましょう。

 5月の生徒朝礼に際して、今日はある大学の先生の言葉を紹介します。
「現在の学生は、好奇心を持って自ら問う力、考える力、答える力が落ちている。科学者に必要なのは、自問自答、自作自習ができる強い地頭である」

 その中でも特に落ちているのが「問う力」だそうです。あらかじめ用意された問題に対して答える習慣が身に付き、大学での学びに必要な「自分で問いを立てること」が出来ない人が多いそうです。

 また、同様に「全体像を把握する力」も足りていないそうです。「問題を解決するためには、その問題の全体像をつかみ、自ら考えて、答えを得るというプロセスがなければ、知力を培うことはできない」とも述べられています。

 今の学生は本の索引を見て、調べたい部分だけを読む傾向があるそうです。しかし、それでは知識が断片的になり、いつまでたっても全体像が見えてこないということになります。

 全体を俯瞰(ふかん)するためには、たとえば一冊の本を最初から最後まで読む、あるいは一つの仕事をじっくりと続けるなどの経験を通して、粘り強さを身につけることが重要であり、そしてそれがどんな仕事にも、どんな場面でも通用する強い地頭を養うことになるようです。

 「自分で問いを立てる力」「物事の全体を把握する力」は、確かに大学での学びや社会で活躍するための土台となることは間違いありません。そしてこれらの力を身につけるためには、その必要性を自覚して日頃の学習や生活の中で、自らを鍛え、高める努力をすることが基本となります。

 しかし自分一人だけで頑張り続けることは、なかなか厳しいことでもあります。この言葉を聞いたとき、「芋こじ」という言葉を思い浮かべました。皆さんにとってはあまり聞き慣れない言葉だと思います。

 「芋こじ」とは、桶の中に水と里芋を入れ、棒や板でかき回すことをいいます。そうすると芋と芋とが互いにぶつかり合い、こすれ合うことで自然に汚れが落ちていきます。

 江戸時代後期、相模国(現・神奈川県)の農家に生まれ、後に経世家、思想家となった二宮尊徳は、農業改革に力を入れ、荒れ地になった農村をいくつも復興させることに尽力しました。また徹底した実践主義者として知られ、その思想・行動は報徳社運動として受け継がれました。

 二宮尊徳は、農民同士の話し合いを重視していたそうです。村の復興には農民の自主性と仲間同士の繋がりが重要だと考え、そしてその話し合いの場を「芋こじ」と呼んだそうです。

 ぶつかり合う芋が多いほど、汚れの落ちるスピードは速くなります。人と人も同じように、話し合いを何度も繰り返すことで、互いに切磋琢磨し、共に成長していくことができると考えたようです。

 一人ひとりが自分をより高めようと、努力することはとても重要なことです。しかし、自分ひとりだけではできることに限りがあります。多くの仲間と触れ合うことで、多くの刺激を受け、より良くより速く成長することができます。

 「人は人によって磨かれる」という言葉があります。共に成長する仲間がいることに感謝しながら、その環境をうまく活用できることが大切です。

 一日も早く普段の学校生活を取り戻し、皆さんが笑顔でクラスの仲間と一緒に学び、部活動や学校行事に取り組めることを願っていますが、まずはこの休業期間をチーム近大附属でうまく乗り越えてくれることを期待しています。