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9月朝礼 学校長講話「あたりまえ」

今日は、今年の6月に新聞で話題になった記事を紹介します。岡山県の高校生が「セミは地上に出てから1ヶ月間ほど生きる」ということを、広島大学が主催する研究大会で報告し、高校生の部の最優秀賞を受賞しました。

 岡山県立笠岡高校サイエンス部の3年生植松さんは、「セミの寿命は1週間」という説に疑問を持ち、自分で調査を始めたそうです。植松さんは、小学生の頃から虫に興味を持ち、セミの鳴く時間帯や雄と雌の羽化に時期の違いなどについても調べてきたそうです。

 今回の疑問のきっかけは、「セミの死骸を夏の間に見かけることが少ないのは何故か」と思ったことだそうです。調査方法は、捕獲したセミの羽に油性ペンで番号をmarkingして放し、後日、再捕獲を試みるというものでした。2016年の7月中旬から9月中旬にかけて、住宅地や雑木林など4カ所でほぼ毎日この調査を繰り返したそうです。

 その結果、アブラゼミ、ツクツクボウシ、クマゼミなど約900匹にマーキングし、その内の15匹を再捕獲、4匹を再々捕獲したそうです。調査の結果、3種とも10日以上の生存を確認でき、最長生存確認は、アブラゼミが32日、ツクツクボウシが26日、クマゼミが15日間だったそうです。

 日本動物学会の研究者から高い評価を受けた植松さんは、「疑問を解決するために、自ら考えて取り組んだ点が認められたのでは」と喜んでいるそうです。現在は調査の精度を上げるために、セミの鳴き声の波形を専用ソフトで解析して、それぞれの個体を把握する手法の確立を目指しているそうです。

 では何故、セミの成虫の寿命は1週間だとされてきたのでしょうか。諸説あるそうですが、それは人間が飼育した場合、成虫が1週間ほどで死んでしまうことから広まったそうです。セミは木に卵を産み、ふ化すると木を伝って地中に入り、幼虫の間、土の中で木の根っこの樹液を吸って生きます。その期間は体の大きさや気温により、3~7年だそうです。

 成虫となったセミも、口先の針のような部分を木に刺して樹液を吸って栄養をとるので、人間が昆虫ゼリーなどを与えても食べずに、1週間ほどで餓死するそうです。このことから「セミの成虫の寿命は1週間」と考えられるようになったそうです。

 多くの人は、「あたりまえだ、常識だ」とされていることを何の疑いも待たずに、信じてしまう傾向があります。しかし新たな発見や改善案の多くは、実はそういう「あたりまえ」の中に潜んでいると言われます。

 例えば、何気なく繰り返している普段の作業や学習、クラブの練習でも、本当にこの方法しかないのかと考えたり、工夫したりすることで、もっと効率の良い方法が見つかるかも知れません。時には、今の方法が一番いいと再確認する場合もありますが、きっとそれも次に繋がる貴重な経験になるはずです。

 しかし「ありたまえ」に対して疑問を持つことは、意外と難しいものです。その為には身の回りへの興味、関心の基となる問題意識と好奇心を持つことが第一歩となります。マニュアルや常識を鵜呑みにせずに、時には「本当かな」とちょっと立ち止まってみることが大切です。あたりまえの壁を破り、新しい発見に繋げてくれることを期待しています。