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9月朝礼 学校長講話「不易流行」

 今年度は例年より2学期を少し早めてスタートしました。残暑の厳しい中、大変でしたが、皆さんの理解と協力と頑張りに心から感謝します。今月半ばぐらいから、朝の立礼の時にも蝉の声が虫の音に変わり、改めて季節の移ろい、秋の気配を感じています。

 しかし現在もコロナウイルスへの感染は止まらず、世界中で多くの人々の生命が失われています。社会生活、経済活動等、多くの分野で様々な影響が出ています。日本でもコロナ禍の第2波があり、今後も更に続く可能性も指摘されています。また変異したコロナウイルスが出現する可能性もあり、コロナ禍がすぐに終息することは難しいと予想されます。

 以前のような生活に戻ることもかなり厳しいようで、AfterコロナWithコロナとしての新しい生活様式が、今後も継続されることになりそうです。2学期の学校生活や学校行事も色々と変更しなければなりませんが、実り多いものとなるように皆さんと共に工夫しながら取り組んでいきたいと思っています。

 今回のコロナ禍において、私たちは今まで経験したことのない自粛生活を求められ、精神的にも肉体的にも辛い日々を過ごし、様々な制限にストレスや先が見えない不安も感じる毎日を過ごしていますが、見方を変えると、この辛い生活をしているからこそ、日常の生活や当たり前であることの有り難さに、改めて気づくことができた貴重な体験だとも受け止めることができます。

 今、私たちが問い直さなければならないことは、何が普通であり何が当たり前であるかということになります。大切なことは、Withコロナとして今までの生活に少しでも戻そうという考え方ではなく、Postコロナ(節目)としてこれからの新しい生活を創るという発想になります。

 「不易流行」という言葉があります。「不易」とはいつまでも変わらないこと、「流行」とは時代の流れに応じて変化することと説明されます。不易という部分は、どれだけ時代が変わっても変わらない部分、変えてはいけない大事な部分であり、それに対して流行という部分は、時代に合わせて変化させる部分です。もしいつまでも古いやり方のままであれば、時代の流れに取り残されてしまうことになります。大切なことは、何が「不易」で、どこが「流行」の部分かをしっかりと見極めることです。

 今日は、中学校の教師であり日本の国語教育の実践・研究者として優れた業績を残された大村はま先生の言葉を紹介します。

 「入学してきた生徒に、私はまず、こんな事を話します。

中学校というところは、これは大人になる学校なのです。
小学校は子どもの学校、中学校は、今は子どもですけれど、大人になる学校なのです。
何か違いがあるのでなかったら、小学校を卒業して、中学校に入学し直さなくても、小学校に九年間いればよいわけです。
したがって、大人になっておかしなことは、
全部やめてもらうところです。三年間のうちに
一人前の大人としておかしくないことを身につけるのです」

 この言葉は、今から50年程前に書かれた本の中で紹介されています。そして「中学校は大人になるための学校だ」という部分は、中学生にとっては「不易」になります。

 皆さんは、「一人前の大人としておかしなこと」とはどんなことだと考えますか。例えば、その場の雰囲気を考えずに、大きな声で話したり笑ったりすること。自分が好きなことは頑張るけれど、嫌なことや苦手なことはすぐに投げ出してしまうこと。あるいは自分でしっかりと考えて選択や決断することができないことなど。色々と思い浮かべることができそうです。

 しかし他の人から示された大人の姿は、自分自身の納得感が乏しいために、それに向けて本気で取り組む気持ちが湧いてきません。まずは自分がなりたい大人の姿を具体的に書き出して、自分が考える大人をしっかりとイメージすることです。目標を具体的にクリアにすることが、実現に向けたスタートであり目標達成への大きな一歩となります。

 皆さん一人ひとりが、教科学習、学校行事、クラブ活動など、毎日の学校生活にしっかりと取り組むことが目標に繋がるトレーニングになります。皆さん全員が、中学生としての「不易」である「自分の目指す大人になること」を達成し、3年間の中学課程を修了することを期待しています。