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4月朝礼 学校長講話「視点を変えると」

 おはようございます。新学期がスタートしておよそ2週間になりますが、これまでの学校生活ではなく、予想しなかった状態、形態での生活になっています。体調は大丈夫ですか。毎日の生活リズムを整え、手洗い、うがいはもちろん、食事、睡眠等を自分でしっかりと管理することが、コロナウィルス感染症への予防対策の基本となるようです。

 今、日本の社会が、世界中がこの予測不能の状況への対応を模索しています。そして学校でも何が当たり前なのかということが改めて問われています。固定観念や既成概念に縛られずに、今できることをそれぞれの立場で柔軟に考え、速やかに実行できる力が重要です。この臨時休業はそんな力をトレーニングする絶好の機会と受け止め、チーム近大附属で一緒に取り組みましょう。

 今日は、ある大学の心理学講座で実施された2つの実験を紹介します。それは400人の学生に「自分が人にしてあげた親切な行動」と「自分が人にして貰った親切な行動」を、それぞれ思いつくままにできるだけたくさん書き出して貰うという実験です。

 その結果を集計すると、「人に親切にしてあげた行動」の方が「自分がして貰った親切な行動」よりも、およそ35倍も多かったそうです。人間がいかに「自分がしてあげた」ことばかりを覚えているかが、わかる実験結果となったそうです。もちろん実際にはそんなはずはありません。上り坂と下り坂が同じ数だけあるように、きっと誰もが人からの親切も同じだけ、あるいはそれ以上に受けているはずです。

 もし「自分ばかりが人のために尽くしている」「こんなにしてあげたのに、何も返してくれない」と不満に感じた時には、この35という数字を思い出し、自分が思っているよりも実は35倍も親切にされていると考えることで、うまく気持ちを切り替えることができると結ばれていました。

 さらにその400人を2つのグループに分け、1つ目のグループには、「足りないもの、手に入れたいもの」を可能な限り書き出して貰います。そして書き終わった後に、次は「自分がすでに手に入れていて、恵まれていると思うもの」を書き出すように依頼します。2つ目のグループには、先程のグループとは逆に「恵まれていると思うもの」を先に書き出し、後で「足りないもの」を書き出して貰います。

 実験の結果、どちらのグループも、最初に書き出した項目の数の方が多くなったそうです。最初に足りないものに注目すると、恵まれているものが見えなくなり、逆に、恵まれているものから考え始めると、足りないものには、あまり意識が向かなくなるそうです。

 自分のことを「恵まれている」と思うか、それとも「足りないものが多い」と思うかは、同じ状況であっても自分のものの見方、捉え方によって大きく変わるということになります。不足しているものを憂うことよりも、今足りているものをうまく活用できることが重要であると結ばれていました。

 私たちが物事を考えるときには自分の視点が基本になります。しかしそれは1つの捉え方であり、そこには様々な視点が存在します。私たちは複数の視点、時には真逆の視点を持つことで物事の本質を捉え、もっと広く深く考えることができます。

 「棚からぼた餅」という諺があります。積極的に働きかけたわけではないのに思いがけない幸せが手に入るという意味です。そのような経験をしたら、もちろん感謝の心が湧くはずですが、目の前に落ちてきた「ぼた餅」をただありがたいという思いだけで終わってしまうことも多いようです。

 幸運に巡り会うのは、本当に偶然でしょうか。自分の行いは必ず自分に返ってくるはずです。そして自分がぼた餅を手にするためには、それを棚においてくれた人の存在も不可欠です。色々な視点で物事を捉え、それぞれの世界を広げてくれることを大いに期待しています。

 全員でこの臨時休業期間を乗り越えて、またたくさんの笑顔に会えることを楽しみにしています。