News

News

令和2年度入学式 学校長式辞

 満開の桜の花が春風に舞い、緑の若葉が顔を出し始めたこの良き日に新入生の皆さんを迎えることができたことを心より嬉しく思います。

 本年度は現在の状況を踏まえて、このような形での入学式になりました。本校でも新型コロナウィルス感染症への対応への色々と工夫を検討しています。

 これはまさに予想外、想定外の事象に対応する力であり、今、様々な状況に応じて時には正解ではなく、最適解や納得解で対応できる力が求められています。そしてこの力こそが、近大附属の学びを通して皆さんに身につけて欲しい力であり、それは予測を超えて大きく変容するこれからの社会を生きるために必要な力となります。

 改めまして、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から皆さんは、近畿大学附属高等学校・中学校の生徒です。本年度、高等学校へは男子639名女子410名併せて1049名、中学校へは男子171名女子123名併せて294名、新入生の総数は1346名となります。

 きっと全員が自分の目標に向けて、日々努力を重ね、時には厳しい現実とも向き合いながら、様々な困難を乗り越えて今日の日を迎え、喜びもひとしおだと思います。 どうぞ今日の自分にしっかりと自信を持って下さい。皆さん一人ひとりが、これから始まる新しい学校生活へ大きな期待を持ってくれていることだと思っています。そしてそんな皆さんを本校に迎えることができ、本当にとても嬉しく思っています。

 今日は皆さんに、これからの3年間あるいは6年間の実り多い過ごし方について参考になる、堀場製作所の創業者、堀場雅夫氏が掲げたユニークな社是として知られている「おもしろおかしく」について紹介します。

 堀場雅夫氏は、敗戦で挫折せざるを得なかった原子核物理学の研究を続けるために、1945年、京都大学在学中に「堀場無線研究所」の看板を掲げたそうです。まさに現在、注目されている学生の起業家としての先駆けでした。その8年後に計測機器メーカーとして株式会社堀場製作所を設立し、現在はHORIBAという社名の分析機器の総合メーカーとして、技術開発で業界をリードしている世界的な企業です。

 社是とは、「こういう気持ちで会社を経営しています」という経営哲学と呼ばれるものです。堀場氏は、それまでの自分を振り返ると、いい仕事ができたのはいつも面白くてたまらんと感じた時であり、全社員がそんな気持ちで働く会社になったらどんなに素晴らしいかと考えたそうです。

 「仕事は『おもしろおかしく』が基本。そうすることによって新たな発想力が生まれる。また疲労感は下がり、能力は驚異的に伸びる」と話されています。そして「仕事が楽しくない社員はやめてくれ」と繰り返したのは、「創意工夫をしておもしろく仕事をした人には、それだけの恩恵を神様が与えてくれる」という信念だったとも話されています。

 仕事を「おもしろおかしく」できる人は、どのような仕事にも前向きに取り組み、新しいアイデアを生み出し、柔軟な発想で仕事を面白いものに変えてしまう能力を持っているそうです。何事においても「楽しむ」ことは、決して「楽をする」ことではありません。夢中になり全力で取り組まなければ面白くなりません。

 そのためには、小さな出来事をおろそかにしない観察力、人の意見を取り入れる素直さ、新たな価値を生み出す発想力、そして何にでも、可能性を見いだす前向きな姿勢です。更に重要なのは、主体的に取り組むことです。自ら考え、責任を持って行動することで、初めて楽しくなるということです。

 現在は、HORIBAグループとして世界各国で、科学研究開発や品質測定などの分野で機器やシステムを提供する企業となり、「おもしろおかしく」はJoy&Funとして共有されているそうです。この社是には、人生の最も活動的な時期を費やす仕事にprideとchallenge mindを持ち、excitingに取り組むことで人生の満足感を高めて欲しいという願いが込められているそうです。

 そして「おもしろおかしく」を実現していくために、
 ・誰も思いつかないことをやりたい
 ・技を極めたい
 ・自分の仕事や会社を誰かに伝えたい
 ・人や地球の役に立ちたい
 ・世界を舞台に仕事をしたい
この「5つのおもい」を強く持ち、実践することが掲げられ、全社員で共有されているそうです。

 日頃、行っていることをやらされているという受け身ではなく、積極的に捉えて自分は何をしたいのか、自分はどうなりたいのかという思いを自分自身でしっかりと持つことが重要になります。

 本学の学園章は、梅の花を象徴しています。そしてその花びらの一部が離れているのは、内面の未完を表し、現状に止まることなく、更なる完成、より高い目標を目指す未来志向の姿勢が込められています。

 今日から皆さんの本校での新しい生活が始まります。これからの3年間あるいは6年間をかけて、この学園で学ぶ目的は自分の持つ力を自分で掘り出す力、学び方を身につけることです。それは学校生活における様々なことに興味・関心を持ち、主体的に考える習慣を身につけ、自立した学習者になることです。

 学校は、自分の夢を実現するためのトレーニングの場です。「人に 愛される人、信頼される人、尊敬される人になろう」という校訓は、それを覚えることが目標ではなく、自分ならばどのような人を愛し、信頼し、尊敬するかを考え、その実現に向けて自分自身が実践することが目標です。

 近畿大学附属高等学校・中学校には、皆さんが存分にトレーニングできる環境があります。それをうまく活用できるかどうかは自分次第です。自分はどうなりたいのかという思いこそが自分の夢への第一歩です。

 本校ではたくさんの先生が、皆さん一人ひとりにしっかりと向き合い、様々な学びの場を提供します。 皆さんがたくさんのものを手に入れ、そして自分で考えること、仲間と協力することを楽しんでくれることを大いに期待し、お祝いの言葉とします。

 最後になりましたが、新入生の保護者の皆様、改めまして、お子様のご入学、誠におめでとうございます。今日の良き日を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。本日より3年間あるいは6年間、私ども教職員一同のみならず、近畿大学学園が責任を持って大切なお子様をお預かりいたします。

 生徒達は、学校生活の中で色々な課題と出会いながら自立し、これからの社会をより良く生きるための力を育んでまいります。様々な経験・体験を重ねながら、心身ともに大きくたくましく成長します。時にはトラブルを通して社会生活の根幹を学んでいくことになります。

 生徒達のより良い成長には、保護者の皆様と教職員が、心を一つにチーム近大附属として生徒達を見守り、育んでいくことが大切です。附属高等学校・中学校では、生徒全員が自分の夢を大きく育て、将来、立派に実現できる力を身につけるように、精一杯、力を尽くしますので、どうぞ、ご安心してお任せ下さい。

 本校へのご理解、ご協力を重ねてお願い申し上げまして、入学式の式辞とさせて頂きます。