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2学期終業式 学校長講話「"会話"と"対話"」

 新学習指導要領のキーワードの1つとして「主体的・対話的で深い学び」があります。昨年は「主体的と自主的」の違いについてお話しました。今日は「会話」と「対話」の違いについて少しお話します。

 会話とは、二人または数人で話をすることで、そこでは深い意味での意思疎通は求められていないことが多いです。日常生活におけるcommunicationとしての取り留めのない話であり、具体的な話の内容を理解し合うというよりも、会話という形式、そのやりとりに重点が置かれています。

 それに対して対話とは「二人が向かい合って話をする」と説明されますが、ただ向かい合って話をするだけなのか。英語で会話はconversationとなり、対話はdialogとなります。dialogの語源はdiaとlogosとなり、diaは「を通して」、logosは「言葉」となります。言葉を通して互いに理解を深め、考えを育てたりするものとなり、そこから対話には信頼関係を築くためにお互いが向き合い、しっかりと話し合うイメージが浮かんできます。

 そして「議論」「討議」は、discussionとなり、語源的には、percussion(打つ、揺さぶる)やconcussion(脳震盪)と同じで、例えるならば「戦い」となり、相手を説得し、勝ち取るというイメージになり、対話とは少し異なります。

 つまり「対話」とは相手を理解し、共感して繋がることとなり、自分の考えを述べるよりも、相手の見ているものや感じていることを受け取ることが、重要になるようです。「話すこと」よりも「聴くということ」が重視され、ただ「聴く」だけではなく、能動的に相手の話を「聴きに行く」「聴くことで感じとる」というnuanceがあるようです。

 では今、何故「対話」が求められるのか。日本には、今まで相手のことを特に意識せずとも、お互いの思いを自然と汲み取れるような環境で暮らしてきたという歴史があり、 日本人は歴史的に同質性が強く、相手を積極的に理解するということに不慣れだと言われています。

 しかしこれから益々多様化するglobalな社会を生きる為には、自分と違う立場や感覚で世界を捉えている人達との「対話」による相互理解が不可欠になります。これからは「対話」と「連携・協働」が、keywordとなり、創造的対話(creative dialog)の基礎となる「対話」のtrainingが重要になると考えられています。

 それでは、学校における「主体的・対話的な学び」とは、どのようなものになるのか。
説明を聴くだけでなく、楽しく会話をしながら学ぶこと、教えられたことだけでなく、分からなかったことを調べたりお互いに教え合ったりすること、自分の考えをしっかりと人前で発信することだけでは不十分だということになります。

 その学びでは、他者の言うことをじっくりと聴き、その人が見ている世界を感じとり、対話をすることで、物事を探究することや何かを創り出すことへ繋がることが重要になります。

 つまり一人ひとりそれぞれで学ぶことには限界があるので、より深い探究や創造をするためには対話によってお互いの考えや感覚を理解し、共有し合うことが不可欠となります。仲間と共により深い学びができる力こそが、大きな変化が予想されるこれからの社会に必要な力となります。

 皆さんには、毎日の学習活動を通して、自分がどんな力を身につけようとしているのかをイメージできることが重要になります。「主体的な学び」とは、自分自身が興味や関心を持ち、そして見通しを持って、最後まで粘り強く取り組むための学びであり、「対話的な学び」とは、自分と他者の意見や考え方を比較したり、自分の知識や考えを広げたり深めたりするための学びです。自分たちの目指す学びの意味を、しっかりと理解し、そして身につけてくれることを期待しています。