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平成30年度修了式 学校長式辞

 三月の異名である弥生には、「いよいよ、生い茂る」という意味があります。春は「草萌え」の季節であり、そこには冬を乗り越えてきた力強さを感じることができます。

 皆さんは中学校の課程を終了し、無事に卒業の日を迎えました。本当におめでとうございます。中学校での学校生活は如何でした。今、振り返ってみて、何が一番印象に残っているでしょうか。勉強はもちろんでしょうが、クラブ活動、宿泊行事、体育祭や文化祭などの学校行事、友達と過ごした時間など、色々なことを体験した記憶が蘇ってくることだと思います。

 きっと皆さんにとって、すべてがかけがえのない大切な思い出になっていることだと思いますが、その思い出をただの記憶ではなく、自分にとって貴重な記憶として心に刻み、その時の思い、学んだことを身体にしっかりと染みこませてくれることを願っています。

 今日の修了式に際して「花は桜木、人は武士」という言葉についてのお話を贈ります。4月の花と言えば桜です。今は少しずつ、蕾が膨らみ始めている時期です。

 「花は桜木、人は武士」という言葉には続きがあり、「柱は檜、魚は鯛、小袖は紅葉、花はみよしの」となります。花だったら、人だったら、何が一番かと思われているものを並べた言葉になります。

 花だったら桜。立ち姿の美しさ。咲いているときの華やかさと散っているときの切なさ。その後の葉桜の清々しさ。すべて良しとされました。

 人は武士。当時の身分制度の中では、最も誇り高き者とされました。しかし実際には「武士は食わねど高楊枝」という諺が示すように、体面を保つ苦労も多かったようです。

 柱は檜。檜には独特の香りがあり、心が落ち着く鎮静効果があるそうです。防虫効果も高く、堅いだけでなく、加工性にも優れ、現在でも高級建材として使われます。

 魚は鯛。「腐っても鯛」「海老で鯛を釣る」という諺があるように、高級魚として重宝されました。現在でもお正月や祝い事には、鯛を食べる習わしが残っています。

 小袖はもみじ。小袖は、袖口が小さい着物のことで、浴衣のように袖口が大きいものは大袖と呼ばれました。おそらく紅葉柄の色が良く映えるとされたようです。

 そして桜はみよしの。みよしのとは吉野桜のことで、桜は吉野の桜が一番。最初と最後を桜でまとめています。

 一説によると、一休宗純禅師の言葉とされています。一休は室町時代の臨済宗大徳寺派の僧侶で、色々な逸話が残る人物です。あの頓知話の一休さんのモデルです。

 桜は、花開く一週間のために、一年間をかけて最上のピンクを表現するための準備をするそうです。花だけでなく、枝も幹もそして樹液もみんなピンクに染めて、開花を待っているそうです。桜の花言葉は、「あなたにほほえむ」です。

 もちろん桜だけでなく、他の木々も体全体をそれぞれの色に染めながら冬を越し、じっと花開く春を待っています。外からは見えないところで一生懸命に準備をしたり、努力することなしに花を咲かせることはできません。決して花だけで咲いているのではないということです。

 自分にとっての花とは何か。目標に向けて辛いことにも耐えながら、コツコツと静かな努力を続けることが、その達成につながるはずです。

 これから始まる高校生活で自分はどうしたいのか、どうなりたいのかということを自分自身と向き合いながら、しっかりと考えなければなりません。高校生になるということは、自分が求めなければ、何も手に入らない環境で学ぶことだと改めて理解することが重要になります。

 皆さん一人ひとりが、自分の花を追い求め、やがて大きな開花の時期を迎えるために、 自分はやればできるという自信を持って、春からの新しい生活をうまくスタートしてくれることを大いに期待しています。

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