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平成30年度 卒業式式辞

 厳しい冬を乗り越え、校庭の梅の花が咲き始めました。木々にも新芽が姿を現し、春の息吹が感じられるこの良き日に、近畿大学法人本部より清水由洋理事長を始め、多くのご来賓の皆様のご臨席を賜り、平成30年度第71回近畿大学附属高等学校の卒業証書授与式を挙行できますことを心より御礼申し上げます。

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。本日、ここに898名が高等学校の全課程を見事に修了し、このような素晴らしい卒業の日を迎えました。様々なことを乗り越え、最後まで全力で頑張り通した結果です。今日という日を迎えたことに全員が大いに胸を張って下さい。改めて皆さんの真摯な努力に心から敬意を表します。

 これから皆さんが活躍するグローバルな社会では、生まれ育った国や環境、文化や習慣が異なる様々な人々とお互いに認め合い、仲間として協働できることが求められています。今日は卒業に際してサラダボウル論についてお話します。

サラダボウル理論は多種多様な民族が共存するアメリカで生まれ、1993年オーストリアの世界人権会議で提唱されました。各民族集団がそれぞれの優れた文化を出し合うことによって、強く美しいアメリカの文化が育っていくという考え方です。

それまでのメルティング・ポット論に変わるものとして注目されました。メルティング・ポット(坩堝)とは、中に金属やガラスを入れて高温に熱して溶かす道具です。熱した中身は溶けて均一になります。銅と錫を溶かして合金を造るように、それぞれの文化や伝統は生かしながら、平等な立場で融和し、一体化していこうとする考え方でした。

 しかし、そこでは民族の個性や独自性は失われてしまい、長い歴史を経て創られてきたそれぞれの文化を無くすことは好ましくないとの考え方が徐々に生まれてきました。その後登場したサラダボウル理論は、性、民族、母語、社会的地位、障害等は関係なく、お互いの違いを認め合い、むしろ歓迎しながら共存していこうという考え方です。

 トマト、レタス、キュウリ、ジャガイモ、タマネギ等、それぞれの野菜が持ち味を出し合うことでおいしいサラダが出来上がるという考え方から、サラダボウル論と名付けられたそうです。別名モザイク論とも言われます。

その中ではトマトとしての味や色、レタスとしての食感など、それぞれがしっかりとした存在感を持つことが求められ、そしてサラダの味を構成するバランス感覚が重要になります。

 これから益々加速するグローバル化、AI、IoT等の進化による様々なイノベーション、私たちがこの大きく変化する世界を生き抜くために必要な考え方の一つになるはずです。
お互いに個性を認め合いながらも同一化、均一化せずに、多様な価値観、考え方を尊重し合い、仲間、チームとして協力、行動できることがこれからの世界を生きる力となります。 大切なことは、自分たちの考え方、風俗、習慣を絶対視せずにそれぞれの文化が異なることを当たり前に認め合えることです。自分が育ってきた身の回りの世界、環境だけで生きることは難しくなり、もっと広い世界で多くの人とつながりながら、生きていく姿をイメージすることが重要になります。

 パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、次のような言葉を残しています。
「人と比較して劣っているといっても、決して恥ずることはない。けれども、去年の自分と今年の自分を比較して、もし今年の自分が劣っているとしたら、それこそ、恥ずるべきことである」

 どうしても自分と他人との違いは気になってしまうものです。時には他人と比較して悔しい思いを持つこともあります。しかし本当に比べるべきは、他人ではなく自分だということです。

去年の自分に比べて今年の自分はどれほど成長できたか。少しでも前に進めたかどうか。そして来年はどのような自分でありたいか。自分の未来は、自分で創るということ。自分が負けてはならないのは、他人ではなく自分自身の弱さだということです。

 春から始まる新しい世界での学び、様々な人との出会いとつながり、自分の進路に向き合い熟考する経験、それらをどのように結びつけられるかが自己実現への道となります。 一番大切なことは、どんなサラダを作りたいのかを自分が決めることです。皆さんには選択、判断できる力が身についているはずです。

 自分の力に自信を持ち、じっと待つのではなく、自らが積極的に求めなければ何も手に入れることはできないということを、今一度理解してください。自分の進むべき先をしっかりと捉え、自分の可能性を信じ、力強くスタートしてくれることを大いに期待しています。

一人ひとりが自分の持ち味を引き出し、おいしいサラダを作ってくれることを楽しみにし、皆さん全員が元気に笑顔で様々な分野で活躍することを心から応援しています。

 最後になりましたが、保護者の皆様、本日はご卒業おめでとうございます。改めて心よりお祝い申し上げます。これまで本校の教育活動にご理解ならびに多大なご協力ご支援を賜りましたことに重ねて御礼申し上げます。

皆様方との出会いに感謝申し上げますと共に、卒業生の前途が幸多いものとなることを祈念いたしまして祝辞とさせて頂きます。

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