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平成30年度 6月朝礼 校長訓話 「6月の花嫁」

 18日の地震では、突然の出来事となる自然災害の恐ろしさを改めて実感しました。現時点では、幸いにして本校では生徒、教職員に大きな被災等の報告はありませんが、地域によってはまだまだ大きな混乱が続き、普段の生活を取り戻すにはかなりの時間がかかる状況です。もし発生場所が近くであれば、自分たちの日常が大きく変わっていたとの認識を持つことが重要だと感じています。

 「津波てんでんこ」「命てんでんこ」という言葉を思い出しました。三陸地方では昔から「津波が起きたら命てんでんこだ」と伝えられてきたそうです。「てんでんこ」は「各自・めいめい」という意味があり、「津波が来たら、取るものも取りあえず、肉親にも構わず、各自それぞれバラバラに一人で高台へと逃げろ」「自分の命は自分で守れ」という防災の教訓になります。自分の素早く逃げる行動が、周りの人の避難を促進する事にもなると言われています。

 またそれは「自分自身は助かり他人を助けられなかったとしてもそれを非難しない」という不文律でもあり、災害後のサバイバーズ・ギルド(生き残り・罪悪感)の対策でもあるそうです。「命てんでんこ」の実践には、万一を想定した準備が不可欠です。学校以外では避難場所への経路や誘導もありません。是非、それぞれが普段の通学経路を思い浮かべながら、自分の命の守り方を一度考えてみてほしいと思います。
 
 今日は「ジューンブライド」という言葉についてお話をします。「ジューンブライド」とは「6月の花嫁」であり、「6月の花嫁は幸せになれる」と言われます。では何故、梅雨の時期に結婚すると幸せになれるのかと疑問に思う人もいるはずです。元々はヨーロッパでの言い伝えだそうですが、その由来はいくつかあります。例えば「4月と5月は農作業が忙しく結婚式をしている時間がない」という説。また「ヨーロッパでは、6月は気候が最も安定していて雨になる確率が低いから」という説。あるいは結婚生活の守護神であるローマ神話の女神「ジュノー」の名前に由来するという説などがあるそうです。

 しかし日本では6月は梅雨の時期となり、雨の日が続き、足元も悪くなり、晴着、特に着物を着用することが多い結婚式は当然避けられることになります。そのため式場もホテルも営業的にはとても厳しく、この時期の売り上げはかなり落ち込んでいたそうです。その打開策として当時開業10年目のホテルオークラが、今から50年程前の1967年頃にこの「ジューンブライド」を日本に導入して、広めたのが始まりだと言われています。「ジューンブライド」という言葉を世間に広めることで、「6月の結婚式」のイメージをアップする、まさにイメージ戦略でピンチをチャンスに変えることができたそうです。そして今では「6月の花嫁は幸せになる」というイメージが定着し、6月に結婚式を挙げるカップルが多くなりました。まさに既成概念を崩し、新しい価値を生み出した例です。

 同じような例をもう一つ紹介します。それは皆さんもよく知っているお菓子である「雪見だいふく」です。アイスは暑い夏に食べるものという考えが一般的だった頃の話です。1981年に「冬でも売れるアイス」を作るというコンセプトで生まれました。アイスを餅でくるんだ大福餅のような形が特徴のこの商品は、菓子メーカーのロッテが研究開発を重ね、冬でも楽しめるように様々な工夫が重ねられました。冷凍しても硬くならない「求肥(ぎゅうひ)」を開発して柔らかい食感を実現し、アイスは餅に合うようによりクリーミーに仕上げたそうです。また冬の販売の為、パッケージには暖色系の赤色を採用し、温かくほのぼのとしたイメージを作り出すように意識したそうです。その結果、「冬にアイスは売れない」という常識を破り、大ヒット商品となり、まさに「アイスは夏」という固定観念を見事に覆しました。

 私たちは気づかないうちに、「これはできない」という思い込みに縛られているのかもしれません。しかし発想の転換と工夫があればその枠から飛び出すことができます。 つまり誰もが無理だと思っていることにこそ、新たな可能性やチャンスが秘められていることになります。そこには非常識が常識に変わることさえあるはずです。
 
 そのために必要なことは、考えることを楽しむ力であり当たり前を疑う力です。それはロジカルシンキングであり、クリティカルシンキングと呼ばれる力です。そしてその力のスイッチは自分の興味や関心です。それは自分の身近なことやあるいは自分自身のことへも当てはまるはずです。皆さん一人ひとりが、ピンチをチャンスに、弱点を強みに、不可能を可能にする力を身に付けてくれることを大いに楽しみにしています。

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