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平成29年度 11月朝礼 校長訓話「何も咲かない冬の日は」

 「何も咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ。やがて大きな花が咲く。」という言葉があります。2000年のシドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子さんの座右の銘としても有名ですが、多くの人がこの言葉を様々な場面で引用しています。

 何をしてもうまくいかない時期がある。そんなときは今は花が咲く時期ではないのだと気持ちを切り替えて、コツコツと努力を重ねることが大切である。努力を続けていれば、きっと報われる。やがて大きな花を咲かせることにつながるという意味で紹介されます。

 高橋選手もこの言葉を練習の支えとして、いくら練習をしても記録が伸びない時も、この言葉を自分に言い聞かせながら頑張ったそうです。

 先日、目にした一冊の本があります。著者は京都にある臨済宗の大仙院というお寺の前住職である尾関宗園さんです。85歳を過ぎた今でも元気にお話をされる和尚さんで、テレビやマスコミでも名物和尚さんとして紹介されています。

 「平常心」という本の中に、先程紹介した言葉があります。昔から臨済宗大徳寺に伝わる言葉だそうです。但し、最後の部分、「やがて大きな花が咲く」は、後から誰かが付け加えたようです。

 元々は「何も咲かない冬の日は、下へ下へと根を伸ばせ。」という言葉で、いつかとか、将来の為ではなく、今、この時の自分を最高に生き切るという意味で、宗派に伝わる大切な言葉であり、考え方だそうです。

 目標を持ち、いつか努力は報われると信じて、今を頑張ることは素晴らしいことで、とても大切なことです。でもそれが行き過ぎれば、将来のために今の楽しみをすべて我慢し、時には今の苦しみから逃れることも遮られ、やがて息切れすることになるかも知れません。

あるいは先のことばかりに気をとられ、今やるべきことや大切にしなければならないことに、目を向けることができなくなるかも知れません。やがて来る春や夏のために、本当に大切なことは、冬には冬しかできないことに全力を尽くし、いつかのためではなく今を生き切ることの積み重ねだと思います。

 きっと高橋選手も毎日、苦しい練習を続けること自体にやり甲斐を見つけて走り続け、そしてその結果として金メダルを手にしたのではないかと思います。

 そんなふうに考えると、この言葉に込められている意味の深みや広がりが、まるで土の中に根を張るように感じられます。身の回りにある色々なことを少し視点を変えて捉えてみると、今まで気づかなかったことや時には全く逆のことが見えてくることがあります。

 当たり前に縛られずに、新しいことを掘り出す力とそれを楽しむ心を持ってくれることを期待しています。最後にもう一つ、宗園和尚の言葉を紹介します。

 「わたくし自身の将来は いまこの瞬間にある いまここで頑張らずにいつ頑張る いまこそ出発点」

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